お酒をゆっくり楽しむなんて、私にはできない

知ってるよ! 集団で酒を飲んで、飲みまくって、酔っぱらって大声で騒いで、あけすけな話もしちゃって、ぐっでんぐっでんの千鳥足で酒臭い口から下手な歌を放つような人間は非常によろしくないので嫌われることくらいは!

入ると空気が少しむっとしていて、卓は台ふきで拭ってあるけど少し油っぽくて、お酒は気持ち薄くて安っぽくて、やや無気力でベルを鳴らすとしぶしぶ注文取りに来るような大学生がメインで働いてるような居酒屋は紛れもない悪だからいなくなってほしいというのもよく分かる。私もかつて引っかかってGo Toイートで半額じゃなかったらはったおしてやろうかって思ったことあるし。

 

でも私は何も言えない。だって私こそが集団の中で飲んで酔っぱらって大声であけすけな話をして酒臭い口をあけて放歌する人間だから。安くてごみごみとした居酒屋の薄い酒が嫌いじゃないから。おまけに握手魔(酔うと周りの人間に握手をお願いして回る現代公衆衛生の敵)である。

そして何もできない。私はちゃんといいお酒を出してくれるお店や自分の私的な空間で、一人もしくは少人数で出どころ確かな美酒をゆっくり味わうなんてうまくいかないから(念のためいうとそのような場は嫌いじゃない、けど楽しめる自信がない)。

見苦しく言い訳をすると、人生最初の(自分も飲酒する)飲み会がゼミの顔合わせ会だったのだ。2年ゼミのそれなんて、安いチェーンの居酒屋で、覚えたての酒をかぱかぱ飲んで、ブレーキの踏み方も知らないまま大暴れするひどいものだぞ。どこもそうだからみんな分かるでしょう!? そこで完璧に誤学習したらそうなるにきまってるよ。さらに責任転嫁をすると、私の家族は酒を飲まず、私の知り合いは私より酒豪がそろっていたのだ。これでゆとりある飲み方ができる大人になるって、まず無理よ。

情状酌量を狙うつもりはちょっとしかないけど、後悔だって何度もしている。飲みすぎてお目当ての料理を食べきれなかったり、某元首相もびっくりの失言王になったり、大声で迷惑をかけたり……布団の中でため息なんていっぱいついた。でも次の会では変わらず飲んでしまうのだ。

 

神よ、もしくは仏、もしくは何か偉大なものよ、私に飲酒時の自制をください、いいお酒を飲んで満足できる、べろんべろんにならなくても満足できる脳をください、このような浅ましい願いを堂々書いてしまう私に喝をください。

2023年10月22日 珈琲院 弱